遺言検索システム
相続が発生して、各種手続をしていくときに、遺言があるのかないのかは重要なポイントとなります。
しかし、亡くなった方が遺言を残しているかどうかわからない。 そんな場合もあるかもしれません。
そんな時に使える方法のひとつ、
「遺言検索システム」という方法をご存知でしょうか?
「遺言検索システムについて」
〇どんなときに利用するシステム?
最初にお話ししたとおり、相続が発生した際、遺言があるのかないのかは重要なポイントとなります。
まず遺言の有無の確認、内容の確認がしたいところですが、亡くなった方が遺言をのこしている旨を伝えていない場合や、自宅や貸金庫等で遺言書が見つからないこともあります。
また、遺言は後から撤回や内容を変更することも可能なので、例えば、自筆証書遺言が見つかったけれど相続人同士揉めていて、その有効性を確かめることが必要、なんて場合もあります。
このような場合に、遺言検索システムを利用すれば、公正証書遺言の有無や保管している公証役場を知ることができるというわけです。
〇検索できる遺言の種類は?
遺言書にはいくつか種類がありますが、そのうちの一つ、公証役場で作成する「公正証書遺言」でこのシステムが利用できます。
〇何が検索できる?
この検索システムですが、厳密にいうと、遺言の内容までは確認できません。
「遺言者が公正証書遺言をのこしているかどうか」、の調査のみになります。
遺言の内容を確認するためには、遺言検索とあわせて公正証書遺言を作成した公証役場に対して、遺言原本の閲覧や正謄本の交付を請求する必要があります。
〇どこに請求する?
公証役場へ請求することになります。
公正証書遺言は、証人2名の立ち会いのもと、公証役場で作成され、作成した遺言書の原本は公証役場で保管されているためです。
日本公証人連合では、1989年1月1日以降に全国で作成された公正証書遺言に関するデータ【①作成年月日、②作成した公証役場名、③公証人の名前、④遺言者の名前】が一元的に管理されています。
そのため、全国どこで作成された遺言でも最寄りの公証役場にて検索することができるようです。
〇検索できる人は?
これは、遺言をのこした方(遺言者)が生きている場合と亡くなっている場合で異なります。
■遺言者が存命中
⇒遺言者本人のみ。
遺言の有無や内容については、遺言者の個人情報にあたるため、奥様やお子様などの推定相続人でも、遺言者が存命である限り、利用できません。
■遺言者が亡くなった後
⇒相続人等の利害関係人(法定相続人、受遺者、遺言執行者など)のみ。
やはり秘密保持のため、誰でも検索できるわけではありません。
〇必要書類は?(★)
公証役場の申請書と一緒に以下の書類が必要となります。
■相続人本人が公証役場へ行く場合
⇒ ①遺言者の死亡の記載がある戸除籍謄本
②遺言者の相続人であることがわかる戸籍
③請求者の本人確認資料(次のa、bいずれか)
a 本人確認資料として免許証、マイナンバーカード等)
b 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)+実印
④認印(③でbを持参する場合は不要)
■相続人の代理人が公証役場へ行く場合
⇒ ①遺言者の死亡の記載がある戸除籍謄本
②遺言者の相続人であることがわかる戸籍
③請求者の本人確認資料(次のa、bいずれか)
a 本人確認資料として免許証、マイナンバーカード等)
b 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)+実印
④請求者から代理人への委任状(実印押印)
⑤請求者の印鑑証明書(3ヶ月以内)
⑥委任者の印鑑証明書
〇手続きの流れ
まず、最寄りの公証役場へ、「申請書」と必要書類を提出します。
各公証役場で様式は多少異なるかもしれませんが、京都の公証役場の場合は、申請書の中で、遺言の検索と遺言書の正謄本の請求どちらも選択する欄があります。
なお、この申請書は公証役場にてもらえます。
請求をかけ、公正証書遺言が登録されていれば、「遺言検索照会結果通知書」が交付されます。
この用紙に、
- 遺言作成日
- 証書番号
- 遺言作成役場
- 作成公証人
- 所在地
- 電話番号
- 作成公証人の氏名 が記載されています。
この通知書を持って、遺言書を保管している該当の公証役場に行けば、閲覧もしくは正謄本の交付請求ができます。
なお、これまでは、遺言書を作成した公証役場まで実際に行く必要がありましたが、2019年4月1日から、最寄りの公証役場にて手続きすれば、郵送で正謄本を取り寄せることもできるようになりました。
〇郵送による公正証書遺言謄本交付請求
次の(1)~(4)のような流れで手続きします。
(1)まず、最寄りの公証役場で、『公正証書謄本交付申請書』の署名認証を受ける。
(2)請求先の公証役場宛に郵送にて謄本交付請求を申請する。
(3)請求先の公証役場からの電話連絡があるので、指示に従い、謄本交付手数料を支払う。
(4)入金が確認されたら、公正証書の謄本が郵送で届く。
※(1)の認証には2,500円の費用がかかります。
※(2)と一緒に、(★)記載の必要書類(免許証等を除きすべて原本)も同封する。
※提出した書類の原本を還付してほしい場合は、その旨を記したメモ等を貼っておけば戻してくれます。
※郵送方法はレターパックに限定されています。(プラス(赤)・ライト(青) どちらでも可)
※返信用のレターパックに返送先の住所・氏名及び電話番号を記入しておく。(プラス(赤)が望ましい。)
〇手数料
▽遺言の有無を検索する遺言検索システムのみ利用の場合は費用はかかりません。無料です。
▽遺言の内容確認のため、正謄本を交付してもらう場合は、1ページにつき250円かかります。
▽郵送請求の場合、交付申請書の認証費用として2,500円かかります。
▽公正証書遺言の正謄本を交付してもらわず、原本の閲覧をする場合は、1回につき、200円かかります。
〇その他
公正証書遺言の正謄本交付請求をする場合、対象の公正証書の作成年・証書番号等が不明である場合は交付申請の認証ができないため、遺言検索の手続を先行して行う必要があります。
今回お話した遺言の検索システム・正謄本の交付請求は公証役場で作成の公正証書遺言しか対応していませんが、令和2年7月より、法務局での自筆証書遺言を対象とした遺言書保管制度も始まっています。
もし、この制度を利用している場合であれば、遺言者が亡くなった後、相続人や遺言執行者、受遺者などが、法務局に行くことで、遺言書の保管の有無及び内容を確認することができます。
法務局での自筆証書保管制度については、以前のブログでも少しお話しておりますので、よろしければご覧下さい。
遺言をのこすことを、家族に知られたくないという方もいらっしゃいます。
しかし、折角のこした遺言が発見されることなく、遺言者としての希望を実現してもらえないのは残念なことです。
遺言は、財産の相続手続について重要であるのはもちろんですが、遺言者がどのような気持ちでその遺言をのこしたのか、そんな想いも反映されているといえます。
遺言書を作成される際は、遺言を公正証書でのこすのか、自筆証書でのこすのかも含め、将来のことも考えて、遺言をのこしていることやその所在など、ある程度まわりの人に知らせておくことも大切な準備のひとつだと思います。
当事務所では、【遺言書作成プラン】もご用意しております。
お気軽にご相談くださいませ。