相続登記しないとどうなる?
相続登記しないとどうなる?
結論から申し上げますと、相続登記を速やかにと勧めるのは相続登記の義務化があるからではございません。
そもそも相続登記とは何?
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった場合に、その所有者の権利を承継する相続人の名義に変更する手続きのことを言います。
亡くなった人の名義のまま、その不動産を売却することも担保に入れることもできませんので、そういう場合には必須の手続きとなります。
相続登記を申請するのに、ご自身で登記をなされようとされる方ももちろんいらっしゃいます。法務局に足繁く通い、手続きを完成される方もいらっしゃいます。もうお仕事も退職されて時間がたっぷりおありの方であれば、出来るか存じます。ただ、そこにかける時間が少ない現役世代の方であれば、はじめから専門家に依頼なされる方が大半ではないでしょうか。
といいますのも、登記申請書を提出するだけではなく、その登録免許税の計算から、評価証明書の手配、戸籍の手配(令和6年3月1日からは直系の相続であれば、戸籍の一括請求により手配はかなり楽になりますが・・・)遺産分割協議書の作成、最終住所が繋がらない場合の書類の作成など面倒なことは山積みでございます。
相続が発生して間もない時であれば、集められる資料も多くなりますので、手続きもスムーズに進みますので、専門家に依頼しても、費用は最小限で済まれることと存じます。
ご自身でされるのであれば、諦めずに最後の最後まで相続登記をやり抜くか、専門家に依頼し、相続登記を完了させることが何より大事です。
相続登記義務化が目の前に迫ってきております。巷では、相続登記しないと10万円以下の罰金(正確には過料)が課せられることを声高らかに言われておりますが、そのことよりも、相続登記が行われないと将来困る事態になることをここで紹介したいと思います。
これは、ちょうど今当事務所にて抱えている案件を若干フィクションにしたものです。
Aは甲不動産を所有しておりました。
そして、当事務所にご相談があったのは、不動産業者さんより、甲不動産の売買の前提に相続登記をして下さいと紹介をうけた案件でした。
この時は、戸籍などの資料がなくAの相続人は、Aの長男であるBと孫であるC・Dの3人であり、話も付いているということでした。
とりあえず、戸籍類(Aの出生から死亡に至るまでの戸籍など)を手配していくと新たな事実に直面しました。
Aが約10年前に亡くなられた時、相続人は、Aの長男であるBとAの孫であるC・D・Eでした。そして、5年前にEは亡くなっていたのです。
これで、Eが子供や配偶者がいらっしゃらなければ、依頼者のおっしゃる通り相続人は、B・C・Dということになるのですが、今回は、配偶者Fもその間に子供G・Hもいたのです。
しかも、子供G・Hは未成年で、Fは再婚をされている状態です。
こうなると、相続人同士お互い話合いが出来ない場合に、弁護士を就けざるを得ないことになります。それで任意で話ができればよいですが、交渉が決裂したら、裁判所での調停や審判が必要となります。
これだけで、弁護士費用、数十万円以上が多くかかってしまうことになります。
これは、当初の予定からは想定外の出来事となりました。
なぜ、このようなことが起きたのか、理由を探したときに、まず一番に指摘できることは、10年前の相続人はB・C・D・Eだけだったのです。
この時に、遺産分割協議をして手続きをしていれば、すんなりいっていたであろう案件です。
これが、相続登記をしなかったために、Eが亡くなってしまったという出来事により、新たな相続人が3名も増えてしまったという事例です。
このように、相続登記をしなかったらどうなる?って言った場合に、上記のように、相続関係が複雑になる可能性が増えて、仲の悪い関係性の相続人が生じる場合があるということです。
この他、手配すべき、資料の収集が、役所の保存期間の関係で手配できなくなるリスクもございます。
このことからも、相続登記を速やかにすることを勧めるのは、相続登記が義務化されるからではなく、実際に10万円の罰金より大きなお金が必要になる手続きの手間や時間が掛かるリスクがあるからでございます。