遺言で推定相続人の廃除する場合の注意点
推定相続人の廃除は、①被相続人に対する虐待、②被相続人に対する重大な侮辱、③推定相続人の著しい非行のいずれかに該当する場合に、被相続人の意思により推定相続人の相続権を剥奪するという制度であり(民法892条)、その意思表示は遺言によっても行うことができる(民法893条)
遺言で推定相続人の廃除を行う場合は、遺言執行者からの申立てになることから、上記①~③の廃除事由の立証が難しくなります。
また、遺言執行者が定められていない場合は、遺言執行者の選任からしていかなければならないので、立証もさらに困難になりそうです。
遺言で推定相続人の廃除をする場合は、遺言執行者を定めることはもちろんのこと、廃除したい推定相続人につき、具体的にどのような廃除事由が存在するかを明確にし、これを根拠付ける資料を添えて、遺言執行者にしっかり託しておく必要がございます。
[長女〇〇には、一切相続させない]旨の遺言は、相続分を0とする指定なのか、推定相続人の廃除の趣旨か遺言者の真意はわかりにくいです。よって、推定相続人の廃除をするのであれば、しっかりと[長女〇〇を廃除する]と明記することが肝要です。
上記により、どのような違いが生じるかについてですが、大きな違いがございます。
それは、相続分0の指定であれば、遺留分の請求が認められることになるのに対し、廃除であれば遺留分の請求も認められなくなるので結果は、大きく違います。
本気で、特定の相続人に1円たりとも渡したくないと思うのであれば、廃除を求めることまでしないといけないのです。
(遺言による推定相続人の廃除)
- 第893条
- 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
(遺言執行者の選任)
- 第1010条
- 遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。